「Steam Storeがゲームをピックアップする仕組み」をVALVEが日本語で解説。内容をまとめ、補足してみました。

2か月前、VALVEがSteamでゲームが目立つ位置に表示されるための表示アルゴリズム、仕組みを説明する資料を公開したため、要点を日本語でまとめたものをNeon Noroshiで公開しました。

STEAM上でゲームが目立つ位置に表示するアルゴリズム・仕組みをVALVEが公開。英語資料の要点を日本語でまとめました。

その後、VALVEに資料の日本語訳を公開する許諾を求めていたのですが「日本語版を公開する予定があるから出さないで欲しい」と止められ……日本語版がやってきました。
日本語字幕対応の動画で。
以下に公開されているので、日本でSteamの開発に興味がある皆さん、マーケティング担当の皆さんはぜひご覧ください。

さて、この動画の元になった文書を紹介したとき、「この資料は有用ですが鵜呑みにしてはいけません。次回TGS2023後にこの資料を読み解くための説明をしていきたいと思います。」と語りました。
公開されたプレゼンテーション資料にはかなり誤解を生む余地があったからです。しかし、この動画では文書で紹介されなかった情報を補足しており、情報量がより多く、誤解を生みにくいものになっています。

その動画を踏まえで少し解説をしていきたいと思います。

  1. Valveの中の人と仲良くならなくても良い

これは実際にそうです。ゲームがたくさん売れていれば担当者と話さなくてもアルゴリズムにより目立つ位置にゲームのバナーが表示され、それが担当者の目に留まりキュレーションされます。

なので実際に後ろで根回しして依頼することはありません。担当者も必要ありません。
ですが例えば、自分のゲームにたくさんウィッシュリストがあって、明らかに特集されてもおかしくないのに特集されてないのはなんで?という疑問がある人はSteamのサポートメールから連絡を入れて確認をしてみることは可能です。

2,人気の近日登場とウィッシュリストの重要性

ウィッシュリストの数は重要ではないと言われていますが、この近日登場ゲームのリストに入ると注目されるので、注目が注目を呼びウィッシュリストが爆上がりします。リリースする前にここに乗ることで3ー5万ウィッシュリストの増加があることをいくつかのクライアントから確認しています。

矢印の日が初めて近日登場のゲームのリストに入った日

ウィッシュリストの増加は、このValveの動画の「リリースまでにできるだけ認知度をあげて勢いをつけることが肝心です」というところにつながってきます。動画の中ではウィッシュリストはキュレーションやアルゴリズムには関係ないとありますが、ウィッシュリストからの購入へのコンバージョン、すなわち転換率は他のメディアよりも高い為、リリース時に向けて勢いをつけるための1手になります。なぜ転換率が高いのかというと、動画でも説明の通り、ウィッシュリスト者には「ゲームのリリース時に通知メールが送信される」「20%以上の割引の通知も送信される」というのがリマインダーとしてプレイヤーの手元に届くのと同時に心に響くからでしょう。

例えばAmazonや好きなECサイトでも自分がお気に入りに入れていたものがセールになったよ!の通知が来たら、購入を迷っている自分に誰かが背中を押してくれたような気がして買っちゃう。そんな感じです。

コンバージョンはウィッシュリストだけではなく、Discordのコミュニティのロイヤルフォロワーの多さや、メルマガなどの開封率が50%を毎回超えてるなどの他のルートからのコンバージョンもあります。特に日本はXが強かったり、日本独自のクリエイターを支援できるプラットフォームなどで日本の人から沢山支持を得ている開発者さんもたくさんいるので、その支援をできるだけ多くゲームがリリースされる前から注目を集めておくのが良い。というのが今回のメッセージですね。

3,ストアページを公開して成功待つだけはマーケティングではない

この2つのスライドは本当に重要です。もちろんSteamのストアページを開設するのには膨大な労力が必要です。ゲーム内のスクリーンショットを準備する、トレイラーを準備する。簡単なように聞こえますが、このスクリーンショットを取るためにはほとんどのUIがゲーム内で出来ている必要もあり、ゲーム内アセットもある程度そろっている必要があります。となるとゲームがほぼ出来ている状況じゃないとストアを開けないのでは?という声もありますが、プロトタイプ時点やプロダクションに入ったときに出来ているエリアやキャラクターだけを使って撮影しスクリーンショットを取るケースもあります。トレイラーもゲームプレイもすこし入れつつドラマティックな感じでゲームの外でアニメーションを作りトレイラーを作るケースも多いです。シネマティックトレイラーと呼ばれるものですね。

ちょっとインディーの例ではないのですが、ゼルダの『ティアーズ・オブ・キングダム』が『ブレスオブザワイルド』の続編としてNintendo Directで公開されたのが2021年の6月。最終的にリリースされたのは2023年の5月です。この2021年の段階ではほとんどゲームが出来ているように見えているトレイラーになっていますが、ストーリー的なショットが多く、謎が多い感じのティザーとなっています。

まぁここで何が言いたいかというと、『任天堂』『ゼルダの伝説』という大きなブランドでも2年以上をマーケティングに費やしているということ。認知を上げリリースまでにどこまで雪だるまを大きくできるか?マーケティング費用があってもなくても、それはどのゲームにおいても共通のマーケティングの目標です。

4,どんなゲームにも成功のチャンスはある?

「どんなゲームにも成功のチャンスはある」「私たちはSteamはPay to Win(お金を払えば勝てるプラットフォーム)になるべきではないと思ってるよ」というメッセージがありますが、その反面で「Steamでは最初に勢いがあった方が良い。スノーボール(雪玉)を加速する(勢いのあるゲームをさらに加速する)プラットフォームである」ということをより強く伝えています。
Steamのプラットフォームにはお金を払う必要がないが、勢いのある状態をSteam上で作り上げるにはイベントに参加したり、コミュニティをうまく利用してその雪玉を転がし続ける努力を開発者側はしなければいけないのと同時に良いゲームを作らないといけない。・・・とやることは山盛りであります。

などなど上記のような現実を知る意味でも、Steamの基礎を学ぶには非常に良い動画になっています。

是非Steamにゲームをリリースしようとしている開発者さん、マーケティング担当者さんは見てみてくださいね。

この記事を書いたNeon Noroshi社は、「欧米から日本、日本から欧米へインディーゲーム」を宣伝するマーケティング会社です。今後も北欧を中心にゲーム文化の面白話、ゲーム開発者の助けになる情報を発信していきますのでX(@NNoroshi)フォローしていただけると嬉しいです!

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